最近は、AT車でもパドルシフト付きの車が増えている。
パドルシフトが付いていると、MT車とAT車のいいとこどり!スポーティに運転したい時はパドルシフトでMT気分!疲れてきたら、パドルシフトを操作しないでATでラクチン!
なんていう頭の悪そうな意見をよく見かけるが、本当にそうだろうか?
結局、本物のMTのようにはならないとは思うがどうだろう。
見ていくとしよう。
パドルシフトとは?
まず、パドルシフトとは何か、というとハンドルの後ろについているレバーのようなものだ。
下はフリー画像を引っ張ってきたものだが、ハンドルの後ろに銀色っぽい羽根のようなレバーが見えると思う。
これがパドルシフトだ。
これを操作して、シフトアップ、シフトダウンをする。
つまり、ATでありながらMTのように自分でシフト操作ができるって寸法だ。
肝心の操作性はどうだろう
これは車種によってまちまちだ。
それこそ、フェラーリに搭載されているF1マチックやポルシェのPDK、そしてGT-Rなんかに搭載されるミッションはマニュアルトランスミッションをベースにしているので、ダイレクト感という点では優れていると言えるだろう。
まぁ、私をはじめ多くの人にはあまり縁のない話だろうがね。
では、こういったスーパーカーを抜きにした大衆車はどうだろうか。
全部が全部というわけではないだろうが、レスポンスはやはりイマイチと言わざるを得ない。
たとえば、トヨタ86。
スポーツカーのカテゴリーであり、レスポンスは良いと言われている。
しかし、youtubeで動画を見てみるとやはりワンテンポの遅れを感じる。
ブゥーーー、カチッ、ーゥン、ブゥーー・・・って感じかな。
誤解があっちゃいけないが、実は恐らくこんなのでもマニュアル車で手動で変速するよりははるかに速い。
だから、操作性という点では優れているのだろう。
ではマニュアル感覚で運転できるのか
AT車しか乗ったことが無い人にとっては、これほど楽しいと感じるものはないだろう。
「いやー、ATだけど自分でシフトチェンジしてるよ、楽しい~♪」って。
しかし、それはあくまでATの範囲での話だ。
実際のMT車とは似ても似つかないものだ。
多くのMT車乗りは、パドルシフト付きのAT車を運転しても、すぐに飽きてしまうという。
疑似的にMT気分を味わうオモチャでしかないのだ。
ATにしか乗れない人のために、メーカーが用意したオモチャだ。
変速の速さ自体はとても速いというのは先ほど述べたとおりだ。
だが、変速のフィーリング面はどうだろう。
人によっては、「何これ?遅っ!」って思うはずだ。
私もその一人だ。
理由は、ドライバーの意思、操作と実際の変速にタイムラグがあるからだ。
変速したい、と思ってパドルシフトをカチッと押し込む。
その瞬間に変速が完了してくれればいい。
だが、実際はタイムラグがある。
これがMT車になれたドライバーには実に気持ち悪い。
MT車に置き換えると、変速したいと思って、レバーを入れ、クラッチをつないだのに、一瞬のタイムラグがあって変速しているようなものだ。
絶対的な変速操作の速度は、手動の方が遅い。
しかし、ドライバーの操作と車の動きはほぼ100%一致する。
MT車はこの何とも言えない快感がある。
AT車にいかにマニュアルモードをつけようとも、MT車とは根本的に違う乗り物だと思った方がいいだろう。
実際に変速自体はちゃんとできるのでいいのだが、大して面白くないぞ。
ていうか、古い4速ATとかでも手動変速はできるしね。
結局ATのパドルシフトは楽しいのか?
身もふたもないが、楽しめる人には楽しいし、私のようにMTの操作自体が好きなドライバーはおそらく楽しめないだろう。
私がMTモード付のAT車に乗っていたときは、たまに遊んだが、アクセル踏みっぱなしで、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、はい変速終わり、という何とも味気ないものだった。
こりゃつまらん、どっちみちつまらないならDレンジのままでいいや、ていうかむしろ操作感がクソすぎて逆にストレスたまる、って気分だったよ。
もっとも、AT車しか運転したことがなくて、「パドルシフト楽しい♪」なんて言っているのはもったいないとは思う。
クラッチ操作の一つもできない軟弱者でない限りは、ぜひMT車も体験してほしいものだ。
クラッチ操作だって別に渋滞でも慣れればいうほど大変でもないしね。
MT車なんて時代遅れだ、今はレースの世界もオートマが常識だ、などと吠える輩も多いが、そういう論点じゃないんだよね。
そういう人はAT限定か、なんとかMTをとったけど、教習所でこりごりってレベルの人なのだろう。
レースの世界では、手で変速してる時間がもったいないからパドルシフトが発展したわけで、乗用車と同列に扱ってもしょうがないね。
パドルシフトのメリットは何?
では、パドルシフトだと何が良いのだろう?
よく言われているメリットは、
・両手をハンドルから離さないでいい
・エンジンブレーキを活用できる
・スポーティな運転ができる
といったところだ。
順番に見ていこう。
両手をハンドルから離さないでいい
まぁこれはAT車のメリットといえばメリットだ。
AT車はもともと両手をステアリング操作に集中できる、といううたい文句だ。
ただ、MTが常に片手運転かのような誤解を与えかねないのだが、MT車といえど普段は両手でハンドルを握っている。
手を離すのはシフトチェンジの一瞬だけだ。
0.01秒を争うレースであれば別だが、乗用車であればそのわずかな時間手を離したところでどうなるわけでもない。
危なそうであればギアをキープすればよいだけだ。
その程度の判断ができないようでは車の運転などすべきではないだろう。
エンジンブレーキを活用できる
パドルシフトの話となると、エンジンブレーキを活用して、ブレーキパッドを長持ちさせられるよ♪という意見をよく見る。
的外れも甚だしく、パドルシフトなどなくてもギヤを落とせば、エンジンブレーキはかかる。
ハイブリッド車でさえ、Bレンジなるものでエンジンブレーキをかけることができる。
20年以上前、タクシー(オーソドックスなクラウンコンフォートだ)に乗ったときに、その運転手さんは4速オートマ?のシフトレバーをガチャコンガチャコンと動かしてエンジンブレーキをかけていた。
別にパドルシフトでなくてもいいのだ。
スポーティな運転ができる
正しくは、疑似的にスポーティっぽい運転のまねごとをしてる感覚が味わえる、といったところか。
MT車の操作の上澄みの部分をさらに濾過したくらいの味わいはあるだろう。
これは、MTモードが付いてないAT車よりは少しはスポーティではあるのだが、所詮はオートマの域を出ない。
たいていは遅いレスポンスと体感の薄い変速で終わるだろう。
よく、峠道をパドルシフトを使って運転して超楽しいー♪みたいな意見があるが、スイッチをポチポチ押しながら走って何が楽しいんだろう?ゲーム?
とまぁ、以上のように大してメリットらしいメリットはないね。
まとめ
MTを運転したことのある人にとっては、一般的なAT車についているパドルシフトはオモチャでしかない。
ATしか乗れない人向けに、ちょっと面白いオモチャをつけただけだ。
フェラーリやポルシェなんかの、割とガチめなミッションを積んだ車であれば変速のタイムラグもそれなりに少ないのだろう。
ただ、それでも左手左足が暇、という別の問題が出てくるが…。
なんにしても、シフト含めた操作の楽しさを本当に味わいたいならMT車に乗るしかないな。
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