エンジンオイルの種類や選び方はいろいろあるが、最も重要なのは粘度だ。
粘度がそのエンジンにとって適切でなかったり、高すぎたり低すぎたりしてはダメなのだ。
今回は、エンジンオイルにとって最重要な粘度についてお話ししよう。
エンジンオイルの粘度はなぜ重要か?
エンジンオイルの働きは、潤滑や洗浄、冷却などいろいろある。
もちろんどれも重要なのだが、一番重要な働きは耐摩耗性だ。
エンジン内部はピストンやカムシャフトなどたくさんの金属部品が動いている。
この部品たちがこすれて摩耗するのを防ぐのがエンジンオイルの最大の役割というわけだ。
では、どうやって防いでいるのか?
答えは部品の表面に油膜を張って防いでいるのだ。
エンジンオイルで金属部品をコーティングしているというイメージだな。
この油膜の強さが耐摩耗性能を決めている。
だから、粘度が最重要項目なのだ。
その証拠といってはなんだが、エンジンオイル缶の一番目立つ場所に0W-20や5W-30などという粘度が書いてある。
エンジンオイル粘度の見方は?
エンジンオイルの粘度はどのように見たらよいのか。
エンジンオイルの缶には、0W-20や5W-30といった数字が書いてあり、それが動粘度といって、文字通り動いている状態の粘度を表している。
この数字が小さければ流れやすく(柔らかい)、高いと流れにくい(硬い)ということだ。
これは、エンジンオイルの硬さやどの気温で使えるかということを表していて、前半の0Wや5Wという数字は40℃での粘度、後半の20や30は100℃での粘度を表している。
さらに、0Wという数字は、どれだけの低温で使えるかも表す。
エンジンオイルの粘度指数とは何だ?
エンジンオイルには粘度の他に動粘度指数という数値がある。
あまり聞きなれない用語かもしれないが、これもエンジンオイルの性能を表す重要な数値なのだ。
粘度指数とは簡単に言うと、温度変化に対する強さということ。
この数値が大きければ温度が上がっても粘度を維持することができるということだ。
理想的には、0W-60のように、超低温でも使えて、温度が上がっても硬さを維持できるというようなオイルだが、オイルは低温で硬く、高温で柔らかいという性質があるため、実現するのがなかなか難しいのだ。
ポリマーを添加すれば粘度指数を上げることができるのだが、ポリマーは150℃以上になると壊れやすい性質があるので、ポリマーをふんだんに使って粘度指数を上げたとしても、耐久性に難がある扱いにくいオイルになってしまう。
鉱物油と化学合成油と粘度指数の関係
粘度指数を語るには、鉱物油と化学合成油の違いは避けて通れない。
鉱物油は、原油から不純物を取り除いたものを精製して作ったものがベース。
化学合成油は、原油からとれた軽質ナフサを分解してエチレンを取り出して、重合させたPAO(ポリアルファオレイン)がベース。
漠然と、鉱物油=安くて性能が悪い、化学合成油=性能が良いけど高価、というイメージをお持ちではないだろうか?
若干語弊があるが、当たらずとも遠からずではある。
正確に言えば、鉱物油は必要十分すぎる性能を持っていて、化学合成油はプラスアルファの機能を追加しているというイメージだ。
粘度が同じであれば、油膜も同じようにできるので鉱物油でも化学合成油でも変わらない。
では、化学合成油はどのような点が優れているのか?
- 粘度指数が高いので、温度変化に強い
- ガソリンや水分を抱き込みにくくできるので、劣化を遅くできる
- 自由度が高いので、スポーツ走行用など用途を特化できる
まず、粘度指数が高いということは熱による粘度変化を小さくできるということなので、高温になっても油膜を保持できる。
エンジンオイルは何よりもしっかりと油膜を形成して部品を摩耗から守る必要があるので、ここが化学合成油の一番のメリットだろう。
次に、劣化の速度を遅くできるというメリット。
エンジンオイル劣化の最大の原因は、熱でも空気でもなく、ガソリンや水分の混入だ。
化学合成油は、ガソリンや水分を抱き込みにくくすることも可能なので、劣化を遅くすることができるのだ。
最後に、化学合成油は成分を自由に合成できるので、作るのに自由度が高い。
つまり、高回転に特化したオイルや超高熱になる高馬力のターボ車向けといった、より尖った用途に限定することができる。
化学合成油は、作るのにコストがかかるので、価格も高い。
反面鉱物油は、化学合成油ほどコストはかからない。
粘度指数は、鉱物油よりも化学合成油の方が高くできるのだ。
粘度指数とエンジンオイルのグループ
エンジンオイルは粘度指数(やその他の指標)によって、グループ1~5という分類がされている。
それぞれ以下の通りだ。
大きく分けて、グループ1と2が鉱物油、グループ3~5が化学合成油となっている。
VHVIはHiVI(粘度指数が高い、という意味)とも言われ、文字通りグループ2よりも粘度が高いとグループ3に分類されていた。
ちなみに、VHVIは鉱物油からも化学合成油でも作ることができるようで、どちらに分類するかが議論された過去がある。
鉱物油に水素を反応させて作るということで、水素化分解基油といわれ、現在は化学的に手を加えて作るということで化学合成油に落ち着いている。
エンジンオイル粘度の選び方
さていよいよ選び方をご説明しよう。
まずは何よりも純正オイルの粘度を知っておかなければならない。
これは各車の取扱説明書に書いてあるので、必ず目を通しておこう。
例えば、私の乗っているアクセラスポーツは以下の通りだ。
これによれば、ガソリンエンジンでは0W-20、5W-20、5W-30の粘度が使えるようだ。
推奨されるのは0W-20のようであるが、この範囲内であれば全く問題なく使えると見てよいだろう。
逆にここからかけ離れた粘度、例えば15W-60とかいったものは使わない方がよい。
最悪の場合、ポンプで同じ圧力でエンジンオイルを供給したとしても、硬すぎてエンジン細部まで行きわたらないといったことにもなりかねない。
どんなに硬くても0W-20であれば、5W-30程度にとどめておくのが無難だろう。
実際私も、前に乗っていたBLアクセラスポーツで0W-20のところ、5W-30を入れていた。
何の問題もなかったことは言うまでもない。
逆に、柔らかくしてしまうのは少々危険性が高い。
アクセラスポーツは0W-20と、あえてこれ以上柔らかくしようがないが、純正で最低5W-30~といった指定がされている車は柔らかいものを入れない方がいいだろう。
0W-20というエンジンオイルは粘度が低いので、サラサラでほとんど水のような感じだ。
したがって、油膜を作る性能はそこまで高くはない。
このようなエンジンオイルを使えるのは、工作精度が高くて、温度管理がしっかりできているエンジンでなければ使うべきではない。
エンジンの温度が極力上がらないように制御して、このような柔らかいエンジンオイルであっても油膜がきちんと作れるようにしているのだ。
そうでないエンジンだと、油膜が上手く作れず、部品が摩耗してしまう可能性があるからだ。
硬めのエンジンオイルを入れるメリット
硬めのエンジンオイルを入れるメリットは、高温でも油膜を強くできるというメリットがある。
だから、適正な範囲内の硬さであれば、硬めのものを入れるという選択肢ももちろんある。
また、隠れたメリットとして、交換サイクルをやや長めにできるというのがある。
これはどういうことかと言うと、エンジンオイルの劣化はガソリンや水分で希釈されてしまうのが原因だ。
5,000kmも走れば、そこそこ希釈されてしまい、オイルが柔らかくなっている。
つまり、粘度が5W-30のエンジンオイルだとしたら、希釈されて0W-20相当になっているという見方ができる。
だから、エンジンオイルを換えるのが面倒、という人にとってはワンランク硬いオイルを使うのも一つの選択肢だ。
まとめ
エンジンオイルの粘度は、エンジンオイルの性能を語る上での最重要項目だ。
まずは純正のエンジンオイルの粘度を確認し、その程度の粘度のエンジンオイルを入れるのがよいだろう。
こまめに換えるのであれば、鉱物油でもなんら問題ないのだが、シビアコンディションでしかも交換サイクルが長い場合、化学合成油であれば劣化の速度を少しは抑えることができる。
また、化学合成油は粘度指数が高いので熱による変化が少ないので、その辺りも高性能と言えるだろう。
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